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賃貸トラブル

その12 大家サンが荷物を処分した?


 大企業の業績回復が、従業員のリストラと中小企業の犠牲を基にすすめられて

きている中で、生活苦から自殺者や夜逃げする人が増えてきています。    
 そして同様に、入居者が家賃を滞納し、引越し費用も無いために部屋の明渡し
が出来ない、といったことも増加しています。本来、このような場合は、法的手
段に従って賃貸借契約の解除・建物明渡し等を求める裁判、強制執行による明渡
を行っていく、ということになるのですが、大家サンによっては『入居者との合
意なしにカギを取替え、勝手に荷物を運び出してしまう』
という行為に及んでし
まう場合も多いようです。                        
 その根拠として契約書の条文中に『貸主は、借主が家賃等を1ヶ月以上滞納し
た時は、催告または法廷の手続きによらず契約を解除することができる』
とある
こと。そして、この契約解除に基づいて、同じ契約書中に『入居者が明渡しに際
し、本物件に残置した物品は、所有権を放棄したものとみなし、貸主は任意に処
分できる』
と書かれていることを理由とするものがほとんどです。      
 そこで今回は、このことについて考えてみたいと思います。まず、契約の解除
については、下記バックナンバーの『その7 入居者が家賃を滞納し始めた!』を
参考にしてください。ただし、1ヶ月の滞納で契約解除が可能かどうかは、疑問
です。                                 
 つぎに、『入居者との合意なしにカギの取替え』については、たとえば入居者
が夜逃げをして戻ってくる可能性が無いことが明らかであるなどの『特殊な事情
』がある場合を除いては、『借主の占有権に対する貸主による侵害』行為とされ
ます。                                 
 さらに、『入居者の荷物を大家サンが勝手に運び出して処分する』ことについ
ては、『借主の占有に対する侵害を伴なわない搬出・処分』であれば、有効との
判断を裁判所はしています。『借主の占有に対する侵害を伴なわない搬出・処分
』とは、具体的には『入居者が任意に部屋から退去した後に残された荷物を搬出
・処分する』場合などです。したがって、入居者が任意に退去していないにもか
かわらず、契約書の内容をたてに大家サンが勝手に荷物を運び出し処分するとい
うことは、原則として法が禁ずるところの『自力救済』として、不法行為
となり
ます。                                 
 また、判例のなかには『法律の定める手続きによったのでは、権利に対する違
法な侵害に対抗して、現状を維持することが不可能または著しく困難であると認
められる緊急やむを得ない特別な事情が存する場合には、その必要を超えない範
囲内で例外的に許容される場合がある』との判例もありますが、傾向としては
主の搬出等の行為について厳しい見方をされるのが一般的
です。       
 したがって、このような場合大家サンは、必ず法的手段を用いて執行すべきで
あり、そのためにかかる時間や費用は、必要不可欠なものとして考えたほうが結
果的に正解です。また、これらを節約しようとするならば、入居者への説得の継
続と冷静な常識ある行動が一番有効なのかもしれません。
          
 でも、最近では空室率の増加傾向の中で、『空いたままで家賃が入ってこない
より、たとえ滞納があっても幾らかずつでも入金が有るほうがまし』という大家
サンもいるようですから、お互い誠意をもって話し合い、この不景気を乗り切る
ほうが、最も良い解決の仕方なんだろうと考えます。            


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